相嶋公爵から手紙もらったよ、ほら。お前の親父だろ? なんかあったの? え、親父から? お前、うちの親父と話す暇なんかあったっけ。 なかった。挨拶しかしてないし、目があった覚えもないんだよな、正直な話。 だよなー……ちょっと見せて。 ほらそこ、『今度はゆっくりしていってくれ』ってさ。 へぇー。めずらしいな、親父が他人に興味持つの。 そうなのか? あぁ。人間のことを『ご機嫌取りというメンテナンスが必要な道具』だとか思ってるフシがあるからな。 なんつーか……親子だよなぁ…… すげー磐佐、こりゃ立派な人間待遇じゃねーか。いつの間に人間に昇格してたんだ? 俺に聞くなよ。……で、いつ行けばいいんだろうな? ……駄目だ。 はぁ? 俺が断ってやる。親父に何を吹きこまれるか、分かったもんじゃねーからな。 おい、横暴だろ! このっ! 返せっ!! それよりほら、もう一通手紙あるぞソコ。 これお前宛ての……あ、これ姉貴からだ、勝手に中身見るぞ。『ぜひまた泊まりに来てくだ』却下。冗談じゃねぇ。 え? あ、おいそれ、俺宛てなんだろ、なに破ってんだよ! お前にゃ必要ねぇよ。 また泊まりに行っていいの? やった! 聞こえてたのかよ……って、連れてかねぇからな。 えーなんでだよー、招待されてんじゃんよー。 お前こそ、姉貴に俺の弱み聞き出してきそうだからな。 大丈夫大丈夫、そんなことしねーって。 だいたい俺の実家は、圧倒的に女が多いんだぞ。『知らない男が、ずかずか泊りに行っちゃマズイ』つったのお前じゃなかったか? 気のせいだ。それより招待は受けるのが礼儀だろ。 だったら俺も、お前の親父さんの招待を受けるべきだよなぁ? ……くっ……足元見やがって…………ん? あれ、こっちの便箋は俺宛てか? なに? まだ封筒に入ってたのか? あぁうん、なんか紛れこんで……―― 『倫太郎へ お前に同棲するほどの友達がいるとは意外だった。ところでもし、お前がそのような理由で妻を娶らないのであれば、なおのこと改めて挨拶に来るべきかと……――』 ん? おい相嶋、どっか行くのか? ……ちょっと実家に電話して、親父をもう一度どこかの教育機関に放り込むよう、親孝行な進言してくる。 |