無題

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 対立国の海上封鎖を無理矢理に突破して、同盟国へ物資を届けてこいというのが、与えられた為すべき任務だった。
 危険と名誉がないまぜになった命令である。それが分かって出てきたのだ、今更怖いなどとは思わなかった。

 しかし艦の両脇に水柱が立つのを見、さすがにまずいと感じた。


 ――部下を道連れにする覚悟は、いつどこにいても、揺るがなかったことはない。



(狙ってやがる……――)
 振り返ったはるかな丘に、砲台が設置されているのだろう。
 体勢を立て直し、それから反撃に移らなければ。
 咄嗟に、全速で場を抜けようとした……――正確には、その指示を出そうとした。

 そのときだった。
 一際大きな音が耳を裂き、辺りが震えた。
(あ……『来る』)
 音の向かう先が「ここ」であることは、直感的に分かった。



 これは、助からない。



 磐佐がそう理解したとき、一人の友の顔が、なぜだかふと脳裏に浮かんだ。





 ……――写し出した笑顔に、心のうちで、僅かに苦笑した。



(悪いな、お先)



 それが、最後だった。

 なにか大きく歪んだものが、視界に広がり、光が炸裂した。





 …………――――。







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