衝動に任せ、達哉を突き上げ始めてからは、もう夢中だった。
 目の前で身体を開き、自分を求めてくれる達哉に、何もかもが止まらなかった。
「達哉……っ」
「ぅ、……はっ、あ、なお、とぉっ……ぁぁあ……!」
 涙目の達哉が声をあげ、びくんと身体が弓なりに反った。手で追い上げていた先端が白濁を吐き出し、内壁が強く締まる。
「……っ!」
 とっさに引き出すと、溢れた直人のものが、達哉の入口を白く汚した。
 身体が痙攣を繰り返すのを抱きしめて、耳のそばでそっと名前を呼ぶ。達哉の口から、安堵したような息がもれた。

 なかに残ったものをそっと掻きだしてやるあいだも、達哉は従順に、余韻を堪えていた。
「大丈夫か……?」
 そっと布団をかけなおす。額にかかる前髪を払ってやりながら問いかけると、達哉はこくんと、恥ずかしそうに頷いた。
「すごく、気持ちよかった……。……直人は?……よ、かった……?」
「あぁ。……最高だった」
 嘘や誇張ではなく、本当に最高だった。
 絶対に手に入らないと思い、望んですらいなかったものが、いま自分の腕の中にあるのだ。これ以上の幸せが、この世にあるだろうか。
(……身に余るな、俺には)
 自分が得ていい幸せでは、なかったのかもしれない。ちらりとそんなことを思った。
 ――医者の言葉が、ふと思い返された。
 その瞬間、達哉の両腕が、直人の首を抱き寄せた。
「直人……っ、……好き、大好きだ……っ」
「……あぁ、俺も。……愛してる」
「うんっ……、なぁ、どう、しよ……俺、死ぬほど幸せだ……」
 そう言って、腕を緩ませた達哉が、涙の残る顔で笑った。
 頬笑みを返してやり、そっと口付けを落とす。
「……俺もだ」



 病魔に侵された直人の身体は、医者に先を告げられていた。
 まだ症状は、ほとんど表に出てはいなかった。病魔の影は薬で抑え、誰にも話してはいない。死の足音は、聞こえるか聞こえないかというほどに微かだった。
 それでも、そう遠くない未来、直人は達哉をおいて逝くことになる。
 双六のようなもので、終わりは確実に、着実に近づいている。いまこうしている、この瞬間でさえも。
(達哉、ごめんな……)
 泣かせたくなかった。
 幸せになってほしかった。
 ただそれは、自分の役目では決してなかった。
(……ごめん)
 一番大切な相手を、自分の手で不幸にするのだ。
 自分より小柄な身体を抱きしめると、何も知らない達哉は、顔をあげてえへへと笑った。



 



ざけんな。