俯せになった背中から、くぐもった気だるげな声がした。
「酒の匂い……きつく、ないか?」
 身動ぎすると言葉の通り、酒気が身体から立ちのぼった。触れる肌が熱い。
「度が高いからな。体温が上がれば匂いもするさ」
 実はお前の徳利には強い酒が、などとは言えない。軽く答えながら手を伸ばし、邪魔な下着を取り払う。
 身体がぴくりと動いたのを気にも留めず、背中から軽く蕾を撫でて芯を緩く扱くと、溜息のような吐息が漏れた。
 普段なら少しは抵抗してみせるのだが、今日はどこか大人しい。
「……っ、は……あつ、い……」
「……途中で寝るなよ?」
 まさか吐いたりはしないだろうが、途中で寝られたらどうしようかと思った矢先、小さな声が漏れた。
「そ、こっ……」
 掌の中で形を変えていた芯の先端に、滴が滲んだのを感じた。敷布を掴んで震える背中に、刺激が足りないと書いてある。
(なかなか、感度がいいな)
 軟膏はと見回したが、あいにく手が届かない。代わりになるものはと周囲を見回すと、先程まで傾けていた濁酒が目に入った。
 さすがにこんなものを、そんな用途に使った先例など、聞いたことはない。せめて先に吐き出させて、それを使うべきかと、一瞬だけ思考を巡らせた。
 しかし自慢ではないが、間怠っこいことは何より苦手な己である。
(これでいいか)
 片手で徳利を引き寄せ、素肌に垂らした。冷たさに反応したのか、待っていたかのように蕾がうごめき、濁酒の雫ごと指を呑みこんだ。
「こっちも力が抜けてるな。ほら……すんなり入る」
 言いながら指を深く挿し込み、ぐるりと動かす。瞬間、敷布を掴んでいた指に力が入った。
「……ぁっ……!」
「お、いい反応」
「やっ、なにっ……やめ……っ! なんか、……なか、気持ち、悪……」
 途切れ途切れの声色は、気持ち良さに押し出されたものとしか思えない。事実、緩く触れた程度の中心が、はっきり判るほどに質量を増し揺れている。
「気持ちいい、の間違いじゃないのか」
 徳利を傾けて直接垂らされた濁酒が、再びひくつく中へ誘い込まれた。
「……っぁ、つめ、たっ……、なか、入れるなっあっ……」
 臥せた身体を動かすと、飲み込みきれなかったものが蜜のように溢れ出た。上からさらに垂らすと、こぼしたものを取り戻すように、入口がうごめき雫を飲み込む。
「垂らすだけで飲み込むなんて、ヤらしい反応だな……」
「うる、せ……っ、や、ぁ……めっ」
 挿し入れたままの指を動かすと、身体がびくりと跳ねる。
 気だるげだった声が、すっかり快感に染められている。二本目の指があっさり飲み込まれ、まだ足りないと誘うようなひくつきに、自分自身も張り詰めた。
 呑み込めるだけ垂らしてみたくもなったが、すでに半分以上垂らした後で、徳利の残りはあとわずかだった。
 それに自分自身も大分張り詰めている。