肘杖をついた上半身の上に跨って、二つ三つとシャツの釦を外したところで、感心したような声が降ってきた。
「器用なんだな。自分のとは勝手が違うだろ? やっぱ慣れか?」
「慣れてるように見えるか……」
 そう返しながら、もう一つ釦を外す。緊張で手の動きもぎこちないのだが、薄暗がりの中で相手の目から見ると、苦もなく指が動いているように見えるらしい。
 ようやく全部の釦を外したはいいが、その下からもう一枚現れた肌着に、軽く口を曲げる。これ以上脱がせるのも面倒だ。肌着をズボンから引き出して、その下へ手を差し入れようとすると、再び降ってきた声が遮った。
「……なぁ、なんなら自分で脱ごうか」
「遅いっつの」
「着流しだったら、多少は楽だったんだろうけどな……」
「その反省は次回に生かせ」
 苦笑いとともに答えながら、指先で引き締まった腹の筋をなぞる。掌を滑らせると、みたび声が降ってきた。
「なぁ、コレさ、お前も脱がせた方がいいのか?」
 さっきから、これからというところで、見計らったように声をかける。わざと手を止めさせようとしているのだろうか。
「俺のことはいいから、黙って集中してろよ」
 うんざりとした色を滲ませて顔をあげる。
 そして視線がぶつかった瞬間、磐佐がさっと視線を逸らした。あまりにあからさまな動きに、相嶋も動きを止める。じっと横顔を凝視すると、磐佐の口から小さな声が漏れた。
「喋ってないと緊張するだろ……こんなん、初めてなんだから」
 それを見て、まさか、と眉をあげた。掌を胸の上へ滑らせると、案の定微かに表情が揺れた。
「ふぅん……感度はまずまず良好か」
 他人が緊張していると知れた途端、口調が軽くなる。自覚する程力の入っていた手が、思うように動く。肌着をたくし上げ、現れた素肌をぺろりと舐めると、相手の肩がびくりと震えた。
「まっ、待てって、そういうのはいい……!」
「黙ってろって言ったろ」
 低く、なるたけ優しく囁きながら、自分の声に口角が持ち上がった。
(俺、こんな声も出すのか)
 そう思ったのは相手も同じらしい。折よく黙り込んだのをいいことに、相嶋はさっさと動きを再開した。唇で胸を探り、さがしあてた先端を含む。唇で啄ばむと吐息が乱れるのを察し、柔らかく甘噛みする。息が詰まるのを見て、下半身が疼いた。
「男の胸なんか、……弄って、楽しいかよ」
「愉しいな、お前が感じるのを見てるのが」
 思った以上に感度がいいのに気を良くして、胸元に舌を這わせながら、さっさとズボンの前を開けさせた。内股に手を滑らせると、緊張のためかぴくりと小さく震える。僅かに持ち上がりかけたそれを、掌で優しく撫で摩ると、「まっ……!」と悲鳴のようなものが漏れた。




だって終わんねぇんだもん! 先はながいよ!