Naoto Side



「…ほら…泣くなよ……」
 髪を掻きあげて、優しく口付ける。ぽろぽろとこぼす涙を、指で拭う。
「ぅ…」
「なんだよ、泣き顔ばっかり見せられる、俺の気持ちにもなってみろよ」
「うる、さいっ…」
 苦笑を浮かべると、ぎゅっと顔を押し付けられた。たまらなく可愛い。
 髪を撫でてやると、腕に力がこもる。以前だって、こう甘えてくれたことは、あまりなかった。
「そうやって甘えてくれるの、珍しいな。…ほら、こっち見て?」
「〜〜〜っ」
 いやいやと、達哉が首を横に振る。
「なんだよ、俺にも顔見せてくれよ…な?」
「涙、っ、とまんなっ…」
 宥めるように肩を優しく抱くと、ぐすぐすと泣き声交じりの声が聞こえて、ほんの少しだけ申し訳なさが滲んだ。
 同時に、こんなに泣かせてるのが自分だということが、嬉しいのも事実である。
「そんなに、泣くなよ…な? ほら…いま俺は、ここにいるんだから」
「んっ…」
 優しく声をかけると、ようやく達哉が顔を上げた。
「…よかった、顔見れた」
 そっと顔に手を添えて、唇を重ねる。濡れた目尻に、涙の後が残る頬に、柔らかく触れていく。
 達哉の恥ずかしそうな声が、耳の傍で、まるで直人を求めるように響く。
「っ、さっきの、夢の話、だけど…毎回でさ…自分で抜いてんのに、欲求不満なのかな…」
 その夢を見せているのが自分だなんて、無粋なことは言わないでおこう。
「そんなに、俺のこと好きでいてくれたなんて、嬉しいな…」
 再び唇をふれ合わせ、今度は深く吐息を追いかけた。歯の裏を撫で、舌を絡めて唇を吸い上げる。
「んんっ…ふ…」
「ほんと、…可愛い…」
 小さな声にごくりと息を飲み、そっと上着を脱がせた。ぴくんと身体が揺れる。
「ん…ぁ、な、に」
「……このあとどんなことするのかも、…もう、忘れたか?」
 そう言いながら、ズボンに手をかける。達哉がもぞりと、恥ずかしそうに身動ぎした。
「あ…忘れてない、けど…後ろ、しばらく使ってないし…」
「いいよ、痛くないように慣らしてやるからさ。無理なら、すぐ言えな…?」
 まるで初めてのような反応は、それはそれで乙なものだ。
 そっと肌に手を沿わせ、下へ下へと探っていく。力の入った四肢が、撫でられるとぴくりと動く。
「あ、まっ…」
「…待つ?」
「んあっ…たの、む、ゆっくり…」
 緊張に身体を震わせる達哉に、思わず抱きしめたい衝動にかられた。
 久し振りの触れあいで、こんな初心な反応を返されて、じっとしていられるわけがない。
「わかった……って、言いたいとこなんだけど、…俺も、久し振りで…抑えられなかったら、ゴメン」
「ぁ、」
 優しく前を撫であげ、ときおり後ろに手を回す。ゆるやかに刺激を与えると、耳元で熱い吐息が吐きだされた。
「…足、がくがくする…」
 緊張からか、震える声で告げられて、直人はようやく手を止めた。そっと、その場に腰を下ろし、横たえながら柔らかく刺激を与え続ける。
「ん、大丈夫か?」
「んっ、ぁ、あっ…もっ、と」
 ゆるゆると立ち上がった場所を、撫でるように刺激していく。指先で入り口を柔らかく撫でると、泣き声のような声が耳元に吹き込まれた。
「ん、緊張してる?…力、抜いて…」
「そこ、やぁっ…あ、うし、ろ、こわ、ぃ…」
 縋ってくる腕を、優しくぽんぽんと撫でる。
 全身で包むように抱き締めると、ようやく両腕から力が抜けた。目線を合わせ、そっと額をぶつける。
「大丈夫だから…俺のこと、信用して…?」
「ぅ、ん…」
「まずは、前、抜くからな……」
 そう言ってそっと胸元に唇をつけ、直人は身体を折り、立ち上がった達哉の芯を口に含んだ。
「!?やっ、いきな、りっ!ぁあっ」
「大丈夫だから…」
 抵抗しようとする腕に、力が入らない。どうやら気持ちよさそうだと踏んで、舌先を先端に差し入れるように抉ると、達哉の身体がその場で跳ねた。
「ひっ…〜〜〜っ」
「…、自分で抜いてた割には、溜まってたみたいだな…」
 口の中に、どろりとしたものが溜まる。その白い苦みが達哉の快感の証しだと思うと、もっともっと溢れさせてやりたくなる。
「っ、は、ぁ…お前の方、が、気持ち、イイ、から…」
「そっか、良かった。…力、抜けるか…?」
 次はここだ。吐き出したものを手に出して、指でそっと入り口を撫でる。さっきよりは柔らかくなったらしいが、まだ力が抜けていない。
「わかんな、い…」
「ん、じゃ、こっち集中して…」
 そう言って唇を触れ合わせ、そっと舌を吸い上げた。
 応えるように舌を突き出し、全てを委ねて縋ってくる手に、いとおしさが募る。
「ぅ…あ、」
「ほんと可愛い…こっち、止まんなくなりそ…」
「ひんっ…ぁっ、ゆ、びっ」
 そっと中指を差し入れると、身体がびくりと揺れた。先だけ埋めた指が、きつく締めつけられる。
「集中するのは、こっち。…な?」
「……ん」
 そっと唇を食んで、同時に達哉の中へと這入り込む。唇の感覚に夢中になったところを見計らい、入り口を揉みほぐし、奥まで指を差し入れた。
「ぁ、あ…ゆびっ、奥、ま、でっ…!」
「…すごい、締め付けてくるな…でも、柔らかい…」
 首筋を柔らかく吸い上げながら、内側を探る。
 弱いと知っている場所を刺激すると、少し掠れた達哉の声が、気持ちよさを鳴いた。
「ひ、あ、ん、やぁっ、そこ、やっ…」
「ん、意外と、感度いいな……ここ、好きだよな…」
「んああっ!ぅ、やっ…ああっ」
 指で撫でるのに合わせて、声が漏れる。
 手の平に押し付けるように腰が浮いて、閉じた目尻に涙が浮かぶのを唇でそっと拭い、直人はそっと指を抜いて足を抱え上げた。
「大丈夫か?…そろそろ、挿れるぞ……」
「ぁ…っ、そん、な、大きかった、か…?」
 ちらりと直人のものに目をやった達哉が、怯えたように声を出す。
 ぴたりと当てた入り口は、ひくひくと動いている。
「嬉しいこと言ってくれるな…。結構慣らしたからな…大丈夫だと思うけど…痛かったら、すぐ言えよ?」
 そう言って足を抱え直し、直人がぐっと、先端を挿し入れた。
「んっ…あ、入ってく、る…!」
 達哉が咽喉を逸らし、熱い息を漏らす。
 入れる瞬間、入り口は微かな抵抗を見せた。しかし先端を飲み込むと、達哉の身体は緊張を残しながら、直人を最後まで受け入れた。
 そこで一度動きを止め、直人がそっと達哉の髪を撫でる。
「なか…熱いなっ……、大丈夫か…?痛く、ないか」
「ふあっ、ぁ…、痛く、ない…うごい、て…」
 達哉の手がさまよい、直人の手と指を絡め合った。
「…わか、った…俺も、そろそろ、限界……っ」
 言うより早く、直人が深く突き上げ始める。目の前で膝を開き、全身で求めてくれる達哉を前にして、我慢などできるわけがない。
「ぁああっ、ん、はっぁ…そこ、イイっ…!もっとぉっ…」
「っホント、気持ち、いぃっ……ほら、コッチも、な…っ」
 腰を打ち付けてなかを抉りながら、前に手を添えた。芯を強く扱き上げ、先程舌で追及した先端の窪みを、今度は指先で強く刺激する。
「っ!ぁ、ひっ…!いっぺんに、そん、なっ、ん、ふぁっ…」
「ほらっ…イッて、いいからっ……俺も、ナカ出し、いいっ…?」
 首をふって限界を訴える達哉に、深く腰を打ち付けた。奥へと誘うように内側が動き、固い場所を擦ると、支えていた膝裏が引きつる。
「んっ…ナカ、欲しっ、ぃ…っ、あ、イ、くっ〜〜〜っ!!」
「俺もっ、も、出るっ……!」
 びくんと身体を逸らして絶頂する達哉の奥に、直人も低く呻いて、自身のものを吐き出した。