政略結婚



「お前には、隣国へ嫁いでもらう」
 父の言葉に、国の重臣達は一斉に反発した。理由はもちろん、『政略結婚なんて姫があまりにおかわいそうだ』という、自分勝手な同情心。 しかし、こうした婚姻は生れ落ちた瞬間から決まっていたこと。 隣国との同盟関係を強固なものにしなければならないと言う事実に変わりはなく、同情心豊かな家臣たちも、結局は折れざるを得なかった。
 さすがの父も、本人の意向を無視した婚姻が後ろめたかったのか、式はこれまでになく盛大なものとなった。 煌びやかな衣装や豪華な食事に包まれて、私は隣国へと嫁いだ。

 ……こんなにうまくいくなんて。

 その日の夜、私と『夫』はいつまでも、布団の中で気を抜けば漏れそうになる笑いを押し殺していた。
 幼い頃から共に遊んだ彼と一緒になるのに、異存などない。
むしろ、他の者との結婚など考えもしなかった私達は、他の者との結婚の可能性を潰すべく、周辺国の同じ年代の姫や皇太子に文を送った。 大人たちの政略結婚の裏をかこう、みんなで上手く画策して、自分達に都合のよい情勢にしよう……――と。
 ……そして最近、夫が『歴史は繰り返す』ことを見越して、娘と隣国の王子を親しくさせているのを知った。
 ……まさか私達の行動も、政略の一部だったのだろうか。




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