求め合う夜



「もう、大丈夫だから……」
 顔を赤らめてそう言った幸に、裕也がためらいがちに手を伸ばしたのは、二週間以上も経った日のことだった。
 あんなことになった幸に対し、自分は何もできなかった。その無力感が、罪悪感となり、胸を締め付けていた。
「痛くないか? つらかったら我慢するなよ……。幸に、我慢はさせたくないから……」
 そう言いながら、裕也はいつもに増して時間をかけて丁寧に、幸の身体を開いた。
 二人は、まるで初めてのときのように慎重に、ゆるやかに身体を重ねた。

 そうして、絶頂の熱を分け合ったあと。

 唇を重ねて余韻を感じながら、裕也は優しく幸へと両手を伸ばし、火照る身体を抱きしめていた。
「……ありがと。……気持ち、よかった」
「……ん、俺も……、……お前とで、よかった……」
 幸の言葉に、胸がいっぱいになる。
 いま腕のなかに幸がいて、自分にすべてを許してくれている。行為そのものを嫌がっても仕方のない身体で、裕也を受け入れ、感じてくれた。
 そう思うと、もう一度という自身の欲より、相手への愛おしさが勝った。
「幸、俺、幸が好きだ」
 溢れるままに、耳元で呟いた。返事のように、身体に廻された両腕に、力がこもる。
「……俺も」
 小さな呟きに幸せを噛み締めて、そっと身体を横たえた。
 久々に受け入れるのは、容易ではなかっただろう。慈しむように素肌を抱き寄せ、裕也はゆるゆると、その体温を感じていた。

 と、腕の中で、小さな声が漏れた。
「……足りない」
「……え?」
 もっと強く抱きしめてもいいのかと、両腕に力を込める。
 すると再び、幸の小さな声が、躊躇いがちに耳に届いた。
「……も……もう一回、シても……」
「いいよ、ありがと。疲れてんだろ?」
 普段はもっとがっつく自分に、気を使ってくれているのだろうか。大丈夫だと、小さく笑みを浮かべてみせた。
 すると幸は少し俯いて、縋る手を震わせた。
「…………そうじゃ、なくて……っ」
「ん?」
「…………もう、一回、……ヤりたい……っ」
 幸の言葉に、裕也は思わず数度目を瞬き、次に自分の耳を疑った。
「……ヤりたい、の?」
「っ……」
 俯いたままの幸が、小さく頷く。それを見て、知らず身体が疼いた。
 裕也にとっても久々の行為だった、正直に言えば、……まだ、シたい。
「……、ん……じゃ、まって、新しいゴムだすから」
 そう言って、身体を放そうとした。
 とたん、幸の両手が裕也の首もとへ伸び、ぐいっと引き寄せた。
「いいっ……」
「え?」
「そのままで、いいから……」
 首筋に顔を埋めて、幸の声がくぐもって聞こえる。吐息が肌に触れ、そのまま熱となって身体のうちへ籠っていく。
「……じゃぁ、ちゃんと外で出すから……」
 そっと肩に触れ、緩んだ両手を重ね握りながら唇を寄せる。少しだけ唇を放すと、触れたばかりのそこが、小さく動いた。
「……あ、その、……なかで、出して……いい……」
「でも、そしたら後で、」
「なかにっ……、……出して、欲しい……っ」
 幸の言葉に、思わず抱き寄せた手が小さく震えた。
 なかに出すのは、裕也にとっては気持ちがいい。が、大変なのは幸のほうだ。
「いい、の……?」
 戸惑いがちに聞くと、手を強く握り返されて、身体を引き寄せられた。
「俺の、ナカで、イってほし、い……」
「幸……」



 二度目は一度目よりも、壊れ物を扱うように、優しく身体を重ねた。
 しかし、「もっ、と……つよ、く……っ」という掠れた甘い声に、裕也自身は正直に反応した。
「っ、でも……」
「んっ、ひろや、が、もっと、ほし、いっ……」
 止めのように求められ、柔らかな内側が引き止めるように締め付けられる。それは裕也の勢いのタガを外すには十分だった。
 普段より積極的に、声を漏らして受け入れてくれる幸の姿に、裕也もそれから先は、ただ夢中になって先を求めた。
「こう、……すごく、……いいっ……」
「あ、んっ、……ひろ、やっ……、おれもっ、気持ち、いっ……あ、ふぁっ……あ、ああっ」
 互いの快感を引き出し、身体を撓らせて達する熱く柔らかな幸のなかへと、裕也もすべてを吐きだした。

 ……そして、行為が済んだあとも離れず、二人は互いの体温を全身で感じていた。
「……幸、」
 裕也が小さく名前を呼ぶ。二人の視線が絡み、溶け合うような口付けを交わす。
 二度目の余韻と相まって、まるで三度目に身体を重ねているような恍惚とした感覚の中で、裕也はぼんやりと感じていた。
(あぁ、俺……いま、すごく、幸せだ)
 この半分でも、伝えたい。二人で分かち合いたい。
 抱きしめる両腕に力を込めると、幸の両腕が答えるように廻されて。
 ――ずっとこのままでいられたらいいのに。
 そんなことを、ぼんやりと思った。




きなうしさんとの会話ログを、エロっぽくしてみた(いまいちエロくないので、「っぽく」という表現)。
…………とりあえず、なんでいろいろすっ飛ばしたんだ自分(爆)
翌朝羞恥で死にそうになってる槙にゃんも可愛いと思います。うん!
転載はきなうしさんのみ可というこt頼まれてもやんねぇよ
(C) minase