経験値



「今日空いてるか。高城先生のところに付き合ってくれないか。大事な話があるんだ。」

 その日の昼休み。
 有泉に声をかけられた。

 高城先生は先日手術が無事終わり、現在入院療養中だ。
 そこで大事な話…。そう聞かされれば思わず身構えてしまうのは仕方がないだろう。
 それほどの「病気」だったからだ。

 果たしてどんな内容なのか。
 道すがらも気を張っていた。

 なのに。


 …まさかこんな状況になるなんて誰が思うだろうか。


「…女性と違って潤いがないですからね。きちんと解して濡らしてあげないとお互いきついですよ」
「そうですか。やはり何か使った方がいいんですか?」
「慣れてくれば、解れるのも早いし出したものでも十分ですけど、最初なら使った方がいいでしょうね」


 ………先程から、緊張感とは無縁の、病室でするのにはふさわしくない会話が繰り広げられている。
 自分がいる必要があるのだろうか。どうにも居心地悪い。というか会話を振られるのが怖い。

 そんな時に限って、タイミングがいいのか悪いのか有泉がこちらに視線を移した。どきりとして、
思わず身体を揺らしたが、その反応は正しかったようだ…
「で、稲葉。」
「なっ、何!?」
 思わず声が裏返ってしまったのはもう、どうにもならない。それよりも何よりも、今この状況で自分に振られることといえば、ひとつしかない。

「今まで使った中で、どれが一番、自分としては気持ちよくて楽だった?」


 …………何がだ。

「は…?」
「聞いてなかったのか?いれる時、潤すのに使うんならどれがイイかって聞いてるんだ」

 …………………。

「それを、ここで、俺に、答えろと…?」
「そのために一緒に来てもらったんだぞ」

 ………………………。

 ぷちっ

「じ、自分の痴態を、好きこのんでべらべらと話したがる奴がどこにいるよ!!」

 この自分の言い分は間違っていないはずだ。
 それでなくとも特殊な関係、平穏が一番だろうが。

「そうか。じゃあ俺が答えるぞ。高城先生、俺がこいつの反応見ていいなと思ったのはやはり」
「わ、わーわーーー!!」
 自分で答えるのは恥かしいが、他人の口から聞くほうが更に恥かしい!
 あわてて口をおさえに飛びつくが、逆にその腕に絡め取られるという不覚な事態に…
「は〜な〜せ〜」
「病室では静かにしろ。お前が答えないから俺が代わりにと思ったんだろうが。こら、暴れるな」
「だったら離せッ」

 小柄(…)な自分には分が悪いが、逃げないわけにはいかない。じたばたしていると、押さえ付けている奴の口から恐ろしい提案が漏れてきた。
「ああ、実践した方が手っ取り早いですよね。せっかく捕まえたんだし」
「俺はありがたいですけど…稲葉先生が…」
「ん?なんのためについてきたか分からないのでせめて身体で示してもらわないと」
「お前が「大事な話がある」って誘ったんだろが!」
 こんなところで、また同じ職場で顔を合わせる人に、見せられるものではないだろうが!
「その大事な話に応えないお前が悪いだろ。高城先生、こいつの弱いとこって、ここと、ここ…」
「っ!!?」
 思わず身体をびくりと揺らしてしまった。
「やっぱ最初は、相手の弱いとこ探して、覚えさせた方がいいでしょうね。そうすると、ほら…」
「ぅ、あっ!?」
 解説交じりにまさぐってくる手に抵抗を示すものの、体勢が悪く、条件反射(?)で小さな声が漏れた。あわてて口をおさえるが遅い。
「ね?まぁ、女性なら身体的特徴があるところが性感帯ってわかりますけど、男の場合は分かりにくいと思うんで、
色々試してみるとイイですよ。ああ、あまりしつこくならないように」
「なるほど…。稲葉先生、大丈夫ですか…?」
「っ、…気遣いの言葉を、頂けるんなら、最初にこいつを、止めてください…」
 たしたことなく終わりそうな予感に安堵しつつも、文句の一つも言っておかないと気が済まなかった。
 が、甘かった。
「なんか、中途半端で落ち着かないんでしたら、病室のトイレ使ってくださってかまいませんよ。結構広いですから」
「は、…え!?」
 なにを言いだすと高城先生の顔を見た自分に対し、有泉の声が妙に、弾んでいた…
「あ、いいですか?実は弄ってたら何となく、ね…」
「!!!!!!」

 抵抗する間もなく、抱えあげられ…



 ぱたん。


「大胆だよなぁ…これできちんと生かさないと、稲葉先生に恨まれるな」




 ブログからのサルベージ。
 高城先生は達哉君との本番の為、先輩(?)な二人にアドバイスを求めたんです…。災難なうさぎさん…

 ……現代パロは色々お話しできてるんだけど(ついった上で)、時系列も何も整理してないんで、
 ぽろぽろ隙間埋めるように書いていくかも、しれま、せん…(自信なし)
 某M様も、書いてくださるといいなぁ、と思ってる今日この頃。
 本編そっちのけで現代パロが楽しいのは…仕方ないよね…
当素材:yggdrasill―世界樹―
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