Tatsuya Side



「ぁ、ぁ…ん、ナカ、あつ、い…」
 荒く息をつきながら、手を持ち上げた。力の入らない腕で、直人の身体を抱きしめる。
 髪を優しく撫でられて、腕に、首筋に、耳にと、優しい口付けが降り注いだ。
「ありがと、な……久々だったけど、大丈夫か…?」
「ん、だいじょ、ぶ…きもち、よかっ、た…」
「…いままでの夢のなかで、一番?」
 悪戯っぽい声に、達哉は思わずその肩へ顔を埋める。
 いままで数え切れないほど、夢の中で直人を求めていたような気がする。しかしその記憶はぼんやりとして、起きたときの哀しさしか覚えていない。
「……夢は、はっきり覚えて、ない、から…比べ、らんない…」
「そっか、じゃ今回のは、しっかり覚えといてな?」
 優しく囁かれ、何度目かの唇を重ね、思わず達哉はじっとその顔を見上げた。
「もしかして…今までの夢も、お前、が…?」
「…………。………抜くからな」
「んぁっ…も、少し、このまま…な、そうなのか?」
 もっと全身で直人を感じていたい。
 腕に力をこめて顔を見上げると、伸ばされた指が目尻を拭い、濡れていたことにようやく自分で気がついた。
「そんな可愛い顔するなよ………えっと…その、実は、な。…ごめん、な?」
「やっぱ、そう、か…ん、いい、よ…今きちんと会えた、から…」
 そう言って首を伸ばす。掠めるように唇が触れて、目が合うと、思わず照れ笑いをこぼした。
 直人の手が、何度も何度も髪を梳く。
「…俺も、会えて良かった………そろそろ、朝みたいだな…」
「え、…あ、やだ、いくなよっ…」
 直人の言葉に、夢見心地になっていた達哉は、はっと思わず縋りついた。
 もう、別れなくてはならないのか。
 こんなに近くにいるのに。
「どこにも行かないよ、俺は。それより、疲れさせちゃって、ごめんな?」
「疲れてなんか、ないっ…」
 懐かしい声が、優しく頭を撫でていく。目尻に涙が滲んで、ぽろぽろと頬を伝った。
「ほら、また泣く……ダイジョブだって、俺はすぐそばにいるから。な?」
 温かい声に、ますます涙が止まらなくなった。
 夢だとしても、まだ目覚めたくない。一緒にいたい。直人がいて、触れあうことができれば、それでよかった。
「ぅ、…俺も、そっちいったら、だめか…?」
 しかし直人は、達哉の言葉を聞くと、かすかに困ったような苦笑を浮かべた。
「馬鹿言うな。そんなこと、聞きたいんじゃない。…な?」
「だって…!目、覚めたら、いないんだろ?」
「いや、すぐそばにいるから。変な夢見させちゃうくらい、傍にいるから」
 悪戯な言い方に、その身体へと縋りつく。
「お前なら、あの夢毎晩でもイイっ…」
 夢の中でしか会えないなら、毎晩でも出てきて欲しい。直人のそばに逝ってはいけないというのなら、ずっと寝ていてもいい。
「なら、期待にはこたえてやらないとなー」
 それでも直人は、笑った声の後には優しさを含ませて、そっと腕を解き頭をぽんぽんと叩いた。
「…でも、ちゃんとした相手みつけて、幸せになってくれていいんだからな。……ほら、そろそろ起きないと」
「お前だけでいいんだ…また、会えるんだろ?」
 身体を離せない。まだ全身が、直人を感じている。
「また、会えるよ。お前の寿命が、そのせいで縮んだりしないといいな」
「縮んでもいいよっ…」
 冗談めかした言葉を聞きながら、両腕に力を込める。また両目に涙が浮かびそうになるのを、直人の身体に顔を埋めて堪えると、直人がくすりと笑いをこぼした。
「まーたワガママ言う…俺のせいでお前の寿命縮んだら、俺、お前の周りの人に怒られちゃう。…そろそろ、抜くぞ…」
「あ…ん…分かっ、た…」
 ゆっくりと、抱きしめていた腕を解く。それでも手は離せず、ぎゅっと指を絡めると、啄むだけの優しい口付けが落とされた。
「…、……ありがとな。ホントに、よかった」
 そっと腕を外されて、頬に添えられた手に、自分の両手を重ねた。
「また、な…」
 ぽつりと呟くと、優しい声が帰ってきて、
「うん、風邪とかひくなよ。それじゃ、な」

 そしてそこで、意識が途切れる。






きなうしさんとのツイログで、なんか、死ネタ的な何かが……!!
というわけで、いつもの通り、地の文つけさせて頂きました! ありがとうございますハフハフ
水瀬が旅行中だったせいで、ログを取って頂くところからお願いしたという、吊るしあげ覚悟の一品。
……。まぁアレだ。クオリティに関しては、仕方がない

死ネタ前提で始まってしまった切ない臭のするカプですが、なんか色々気になる…っ!
とりあえず二人は10才差です。ムフン(=ω=)