先に目が覚めてしまい、することもなくぼんやりと、隣で眠る伊多の寝顔を観察していた。
 昨夜、同性である自分を組み敷いていた顔が、無邪気に目を閉じていた。吐息を乱す自分の上で、あちらこちらを擽り暴いた唇が微かに開いて、微かな寝息を立てている。
 顔立ちは整っている。性格も悪くはない。無邪気過ぎるのは槙にしてみれば欠点だが、そんなところも可愛いらしく、女性には人気がある男である。
 実際、男相手は自身が初めてなのだと、そう言っていた。
(……それがなんで、俺なんだ……?)
 そんなことを考えながら、そっと手を伸ばしてみた。
 組み敷きながら、ボタンを外しながら、「槙の方が可愛い」と囁かれる。またいつもの伊多の軽薄からかと、その都度襲う照れを宥めすかして隠し去りながら、その言葉の深意がいつも気になっている。
(……俺は、)
 伸ばした手のやり場に困り、結局肩に手を掛けた。
「……伊多、……そろそろ時間だから、起きろ」
 曖昧な気持ちを振り払うように、ゆるやかに伊多の肩を揺する。
 すると、微かな声が目の前の唇から洩れ、昨夜と同じように槙の耳朶を擽った。

「……こ、う……」

 その瞬間、どきりと身体の奥が脈打った。
 一瞬遅れて自覚した疼きに、かっと頬が熱くなる。
 名を呼ばれると、弱い。
(貴様は、どう思ってるんだ、伊多……)
 彼相手に身体を開くのすら、回数を重ねた今も恥ずかしいのだ。正面切って聞くのは、少し気が引ける。
 かわりに肩に手を掛けたまま、やわらかくその身体を抱き込むように、上体を折り曲げた。
(……俺、は、貴様だけに、抱かれたいんだ、裕也……)
 他の誰でもない。彼だから許し、受け入れているのだ。
 こんな恥ずかしいことを、相手が寝ているとはいえ、口に出すことはできなかった。
 代わりのつもりで腕に力を込めると、回されたままの腕が、ゆるりと力を込めて、槙の身体を抱きしめ返した。




ちょっと爆発してきます

きなうし様のサイト裏ブログで公開なさっている、某小説……の二次。
槙さん視点妄想してたら、気付いたらこんなことに。
実にすみません

本家いいですよ……マジいいですよ……ほんっといいっすよ……。
二次とかいいから、そっち読んでこられることをオススメしますですよ……!

っていうか実にすみません