身動ぎすると、何を我慢しているのか、背中がぴくりと動く。繋がった場所が締めつけられて、快感に息をついた。
「気持ち、イイな……」
「……っ」
 細い腰を支えて、背中に身体を重ねた。互いの吐息が近くなる。
 締めつけた瞬間、自分でも感じたのか、さまよった手が強く敷布を握った。声を抑えようとしたのが分かり、絡めた指で熱を煽ると、溢れたものが指を伝う。
「っ!……そっち……やめろ、って……」
「やめたほうが、キツくないか」
 快感を煽ると、身体が応えるように締め付けを強くする。
 体勢を整えて息を整えていると、ふと、笑い交じりの言葉が漏らされた。
「……なんっ、か……感慨深い、な……っ」
 膝を立てて、顔を埋めた両腕の下から、熱い吐息が漏れている。
「感慨?」
「……他に、ないだろっ……こんな、さ……」
「……、どういうことだよ」
 溢れたものを先端に絡め、敏感な箇所を探りながら、ゆっくりと背中に舌を這わせた。
 びくんと動いた、筋肉と骨が浮いた素肌は、しっとりと湿っている。
「こんな、こと……お前がいないと、やんないっ……からな」
「お互い様だろ、それは」
 彼の言葉に、苦笑にも似た返事を返す。
 彼が受け入れる相手は、確かに自分だけだ。しかしそれは、他の男の経験がなく、そんな気もないからだ。
 それに対して自分は、相手の性別を選ばない。そのうえで、彼を選んでいる。
(相手がいないわけでもねーのに……お前がいないと、やんないんだぞ)
 ゆるゆると腰を動かすと、意識が快感に絡め取られる。引きとめるような締め付けと荒くなる吐息が、相手も快感を得ているのを、確かに伝えてくる。
「いっそ、俺と二人っきりのとき……その気になるように、なれよっ」
「……っ、意味、分かんっ……ね……っ」
 段々と声がかすれる。
 切羽詰まり、余裕がなくなっていくのすら、自分の下でだけなのだ。そう思うと、自分自身も高められるのは、仕方がないことのように思えた。




かなり後期。
「こいつでいいか」が「こいつがいいな」になる過程だったり