ごみばこ。
書いたときのことを覚えてすらいない。カプとか知らん。



無理矢理物影に引きずり込まれたかと思うと突如目隠しを廻されて、抵抗虚しく後ろ手に縛られたのは、相手が複数人であることを示していた。殺されるかと思い同時に覚悟も決めたのだが首を絞められるでも刺されるでもなく、見えない視界の向こうでいきなりシャツと上着を引きはがされて知らない掌が肌を撫でやる感触に、これから起きることを否応なく知らされてぞっと全身が粟立った。覚えがない行為ではないが無理に情欲を掻き立てられてもそれは痛みと苦しみでしかない。誰かの指が口内へ差し入れられると、噛みちぎらんばかりに歯を立ててやった。途端相手の怒りを買ったのか強引に身体を抑えられ、次の瞬間背筋を貫いた違和感に全身を思わず硬直させた。慣らされもせず力まかせに開かれた身体は痛みを発し、苦痛に顔を歪めて唸りを発すると覆いかぶさった相手の喘ぎと重なった。この上ない屈辱に唇を噛み締めるが身体の自由は効かず、相手をのみ高みへ追いやる儀式的行為が幾度となく繰り返される。目隠しの向こうにちらつくのはいつも見ていた人の顔で、彼に自分が望んでいた仕打ちに似たものをいま自分が受けていることに、皮肉すら感じる。相手が彼であればと思うに従い感情と身体とは乖離していき、儀式のようなそれが終わるころにはドロドロの身体が他人のもののように感じていたのだから辛いはずもなかったし、先から降り出した雨に混じって頬を伝った熱いものは涙などであるはずがなかった。

腕を捕まえられたかと思うとあっと言う間にどこか屋根のある場所へ引きずり込まれたが、先程受けた扱いと同じにしては恐怖が蘇ってくることはなく、優しさのある挙動で茶を差し出されるに至って初めて彼は、のろのろと口を開いた。起こった出来事を口にするのを躊躇うことすら忘れ、とつとつと語り終えるまでに何度相手の顔を見ることが出来たのかは分からない。受けた凌辱は人間として最低のものだったが、身体を開かされた相手が彼であったならどんなにかマシであったろうと本人を前にして考えてしまうのだから、自分が受けた行為を無下に糾弾できないことは自身でよく分かっている。犯人を見付けて報復せんがばかりの追究に「見ていない分からない」と首をふると、辛そうな顔で抱きしめられて初めて過ぎった哀しさを掻き消すように腕を廻し返してみれば、何故だか自分の冷たい両腕は細かく震えていた。女々しいと自らを笑いながらも心中に溢れたのは恐怖とは別の何かで、当然の反応だろうと低く囁かれるとついに奔流がほとばしり、嫌でないなら自分を抱かないかと自然に口走っていた。目を見開く彼を直視できずその肩に顔を押し付けて、身体に染み付いたものをせめて同情で拭い塗り潰して欲しいと重ねれば彼が断れなくなるのを知っているのだから己の無茶に反吐が出そうである。それでも彼は何も言わずに手を延ばしてきて、指先が首筋を伝った瞬間には期待が身体を押し包んだことを、彼にだけは教えられないのだ。優しさに付け込んで想いを成就させる卑怯な己をひた隠しにしながら、今度こそ望むままに味わう歓喜の味は、どこまでも甘い。



土砂降りの中でぼんやりと突っ立っていた彼は自分に室内へ引きずり込まれても服の上から乱暴に身体を拭かれても茶を出されても黙ったままで、どうしたものかと自分が思案している最中にようやく唐突にその身に起きたことを話しだした。それが自らの予想を遥かに超えるものであったことは言うまでもなく、すなわち無理矢理男に犯されたのだという告白にぎょっと相手の様子をよくよく見れば、釦の弾け飛んだ衣服と生気のない目に行き会って、彼が同性から受けたという凌辱の痕跡がありありと伺える。大切な相手をこのような形で傷つけたことに言い知れない怒りが沸いてきて犯人はどこの誰だと問い質したが、返ってきたのは見ていない分からないという虚ろな言葉だけで、成す術もなく両手を延ばしてその濡れた身体を抱き寄せると震えた冷たい両腕が固く自身を抱き返した。冷たい身体が震えていて女々しいなと彼が自分で笑うのに当然の反応だと返してやると、今度は低い声で嫌でないなら自分を抱かないかと持ち掛けられ、今度こそ彼は言葉を失った。正気に返れと口に出し掛けたが身体に染み付いたものをせめて同情で拭い塗り潰して欲しいとかぶせて懇願されれば抗えるはずもなく、黙ってその頼みを受け入れようと彼に震える手を延ばす。しかし延ばした己の手が救いのためでなく自分のためであることだけは、目の前の彼にだけは伝えることができなくて、溺れていくだけの卑怯な己をからかうように黙ってつっと首筋に残した痣はまるで生贄が流す血のように鮮やかな紅色をしていた。

すべてが終わった途端こと切れるように眠りに落ちたのを見ると多少無理を強いてしまったのかもしれない。それでなくとも彼の身体に掛かっていた負荷は相当なものだったのだ、衝動に任せて無茶をした後悔がちくりと胸を苛む。数えきれない傷痕や鬱血の一つ一つに唇を寄せた、己の浅ましい行為を思い出して皮肉に口角を歪めて首筋の痣を指先で軽く引っ掻いてみたが、肌が少し引き攣れただけであった。他の全ては傷痕の上に刻んだが、その一つだけは他でもない自らの印として刻んだものだ。救いを求めて縋ったこの自分までもが疚しい下心を抱いていたなど、誰が本人に伝えられるものか。とはいえ彼の身体に残る乱暴の痕が心中を掻き乱すのをみると、自覚していた以上に想いは大きかったのだと気付かざるをえない。指を延ばしてついに最後まで重なることのなかった唇をなぞると、噛み締めていたのであろう傷痕がちらりと目の端に映った。乱暴を受けた屈辱なのか先程のものかは分からない。何を見ても変わらないどころかより強くなるだけの想いの飛沫を舌先に載せて顔を近付け、子供の遊び程度に口を重ねてから名残惜し気に唇を一嘗めして顔を離した。途端ぶつかった視線に衝動的な己の行為が白日の下へ曝されたと悟り、羞恥でも絶望でもなく達観が身を包んだのだから人の心とは分からないものだ。じっと見詰めたのを彼がどう受け止めたかは分からないが、手が延ばされたのだけは厳然たる事実で、得たりとばかりに奪い合った吐息の熱さは一生忘れないだろう。




 ともすれば再び火が着きそうな絶頂の余韻を、肩で息をしながらやり過ごしていた。
 その最中、まだ身体を隙間なく着けた首許で、ぼそりと囁かれた。

「イくの、随分早くなったよな」
 途端、思わずかぁっと顔が熱くなった。

 自覚はしていた。しかし、気付かれていたとなると、話は別だ。
 互いに慣れてきたためか、痛みをあまり感じなくなった。同時に、その感覚がどうすれば絶頂への道筋となるかを、身体が覚えてしまったのだ。
 挿れられて擦りあげられれば、身体がその先を期待する。
 快感を覚えて、四肢が震える。
 それを自覚すれば、羞恥心がさらに快感を増幅させる。
 そして快感が頭の内を支配して、あとは声を殺すのに精一杯で、羞恥心すら溶けて消えてなくなっている。眼の端に浮かんだ熱いものは、身体が善がっていた証なのである。
「う、るさい……っ」
 顔を見られるのが嫌で、強く抱き寄せた。顔が熱い。
 早くなったどころか、あんなことで絶頂を覚えてしまったことそのものが、いまだに信じられないし信じたくない。それは初めてでも、数度目でも変わりはしない。
 その醜態を、眼前の彼に余すところなく見せてしまったと思うと、頭を抱えて叫びだしたくなる。
(誰の、せいで……っ)
 腹立ちまぎれに、そこへ強く顔を押し付けた。すると肩が僅かに動き、掌が髪を撫でた。
 落ち着かせるような動作が気恥ずかしい。抱きよせているのが自分の腕であることに気付き、ゆっくりと力を抜くと、身体を起こす気配を感じた。
 まっすぐな視線を感じて、視線が合わないよう、咄嗟に目を逸らす。
「で、誰に開発して貰ったんだ」
「……はっ?」
「最初は俺なんだろ? だったら聞く権利はある」
 思わぬ言葉に、思わず腕を緩めて眉根を寄せた。恥ずかしさも忘れて目をやると、視線がぶつかった。相手の目が、不貞を咎めるような色を孕んでいるのに気づく。
 意味が分からない。こんな身体にされた自分はともかく、なぜ彼が、そんな目をしなくてはならないのだ。
 その気配が滲んだのか、彼はふいと、物言いたげに目を逸らした。

「言いたくないなら、いい」

「……他に、俺とどうにかなってやろうなんてヤツが、いるわけないだろ」

(そもそもそんなやつが現れるなど、考えてもみなかったんだ)
 いや、それよりなぜ、こんなことを言わなければならないのだろう。ちらりと疑問が浮かんだが、咄嗟にそれを打ち消した。
「だからつまり、その……俺が、こうなったのを……人のせいに、するなよな」
 戸惑い交じりにそう言うと、少し湿った手の平が、柔らかく腰を撫でた。
 そして低い声で「……そか」とだけ呟いた。



◆デレさせたくて結局失敗した

1.相嶋はムラッときたら襲う(分かりやすい)
 誰でもクるわけじゃなくて決めたら一筋。ちょっと重いかなーとは思うけど、相手に対しても、自分が気持ちよくしてやりたいのは譲れない。

2.磐佐はムカッときたら襲う(滅多にない)
 誰でもよさそうなのが不愉快だけど、口には出さない。自分は、一人固定した相手がいれば他には行かない。その辺きっちりしている。

3.よく覚えてない
A「なんだよ最近、あっちこっちふらふらしやがって」
I「何しようが俺の自由だ、お前に指図される筋合いはない」
A「指図なんかしてないだろ。今日も行くんなら、とっとと行ってこいよ」
I「俺は出ねぇよ。それよりその言葉、そっくりそのまま返してやる」
A「なんで俺が出かけなけりゃならない」
I「誰でもいいんだろうけどな、それなりの相手を選べって言ってるんだ」
A「俺だって相手は選んでる、誰でもいいわけじゃない。……お前がもし嫌なら、そう言えよ」
I「複数の中から選んでるんだろ。そういうのを誰でもいいって言うんだ」
A「お前はアテがないから俺なんだろうが、こっちはちゃんと選んだ上でお前なんだ。勘違いするな」
I「……俺だって、アテがないからって、お前で我慢するほどモノ好きでもねぇよ」
A「……一度じっくり話し合わないか?」
I「いや、遠慮しとく」

◆捨て場所に困ったのでもうここでいいや

 増やした指でその場所を強く擦ると、内股がびくんと震えて、足の指先まで引き攣った。
「……!」

 軽い絶頂を迎えさせたことに、小さな愉悦を覚えて、まだ痙攣の治まっていない腰を引き寄せる。
 何をされようとしているのかに気付いたらしいが、そのわずかな抵抗をものともせず、先端を蕾に押し当てた。数度試すように入り口を撫でてから、勢いづけてその身体を深く穿つ。瞬間、熱い楔が善いところを掠めたのか、身体が大きく弓形に反り返った。
「……っ、ぁっ……」
「く……っ」
 限界をこえた快感が押し出されるように、目尻を熱い雫が伝った。紅く染まった目許や力の入った指先に、官能の色が深く染め抜かれているのが堪らない。
(食いちぎる気か)
 このままではまずいと一度引き抜く。惜しむような締め付けが、自身をますます高ぶらせる。
 先端を埋め込んだまま、目の前に反り返った相手の芯を宥めるように、優しく扱いてやった。すぐに先端から快楽の証がとろりと溢れ出した。薄く開いた口から吐息が漏れると同時に、先端を含んだ入り口が誘うようにひくつくのを目にして、堪え切れずに再び深く穿った。
「あぁっ……」
 食いしばっていた口許の力が抜けた瞬間であったのか、切羽詰まった声が喉元から押し出された。耳を犯したその喘ぎが、埋め込んだ下半身にまで響いた。


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