蜩の声が、荒い息の合間に耳に届く。
「……雨戸、閉めろ、って……」
「雨も降ってないのに、か?」
 戸袋の影に身体を隠してはいるが、薄い壁板一枚向こうには人がいる。生け垣の向こうから少し背を伸ばせば、家の中が見えてしまう。
 単に抜いているのですらない。同じ男に迫られて触られ、イかされようとしているのだ。見られるかもしれないという焦りが、何故だか局部に意識を集中させる。
「だっ……そろそろ……、よせ、って……っ」
「焦るなよ、まだ後ろを解せてない」
「どこまで、ヤる気……なんだよっ……! だったら……雨戸、閉めろっ……」
 すでに上半身が押し倒されようとしている。寛げられただけだったズボンも、いつの間にか腰の下あたりでだぶついているのである。
 そして何より、芯を撫でやる手がときおり後ろに回り、確かめるように指先を裡へと沈めてきている。
「っ、な、ナカはやめろっ……」
 差し込まれた指が動くのに、思わず身体をのけ反らせると、隙を突かれて上半身を押し倒された。指を抜かれて安堵したのも束の間、ズボンを抜き取られて膝を割り開かれる。
 普段人には見られることのない場所を晒されて、恥ずかしさにそこを隠そうと手を伸ばした。しかし先に伸ばされた手が芯を強く握り、すでに危うかったものを一気に追い立てた。
「あっ、やめっ、出っ……!」
「静かにしないと、外に聞こえるぞ」
「……ん、……っ!」
 静かにしろと言いながら、後陰へも指が挿し込まれる。堪えているのを見て、楽しんでいるのに違いない。
 いつの間に取り出したのか、軟膏がぬちょりと音を立てて、二本の指が柔らかな裡を撫でた。
「んっ……!」
「ん、大分慣れてきたよな。最初は指一本も入らなかったのに」
 中に挿し込まれた指が、胎内をやわやわと掻いた。微かに欲していた快感のもとを、ぐるりと指で撫でられて、思わず咽喉を反らせた。
「んぁっ……あ、……やっ、……!」
「ここが弱いんだよな。こうやって、何回も撫でられるの好きだろ」
 言葉の合間に、指が胎内を蠢く音が聞こえる。
「ぁ……く……っ、ふっ……」
 ダメだ声を出してはいけない。吐息が響くのもマズい。
 考えることも感じることもぼんやりとして、快感の波が全身を襲い、膝裏から指先をひきつらせた。わずかに浮いた腰が、耐えられないというように揺らめく。
「っ、……ん……っ、ぁ、う……」
 板塀の外から人の声が聞こえて、思わず口に手を押し当てる。と、同時に指がぐりっと、深く快感の根源を強く抉った。
 瞬間電流が走ったように、腰が大きく跳ね上がり、全身がびくんと躍動した。
「……――っ!」

「見られるの、好きなのか」
 答えを返すよりも早く身体を反されて、おもわず振り返った。
「はっ……なんで、そうっ……!」
「人の気配がした瞬間イくなんて、思わなかったからさ。……そうか、いつも声殺してるのは、そういうことなのか」
 どういうことなのか、聞こうとした。しかし遮るように、絶頂へ達したばかりの胎内が、再び熱く抉られた。
 指とは違う熱いものが、最も敏感な点を刺激する。問う声は、耐える息に飲み込まれた。
「今からが本番だ。頑張って、声抑えろよ」
「……っ、待っ……ぁ……!」
 殺そうとした吐息に、絶頂の余韻が滲む。
 快感の逃げ場を探して手を伸ばしたが、固く包み込まれて逃げられるはずもなく、滲んだ涙が汗と混じって、暗い畳にぽたりと落ちた。







「声殺す方が感じるんだろ? だからいつも素直に鳴いてくれないんだな」
「違っげほっ……違うに、決まってるだろ……!」
「じゃ声出せよ」
「やだよ!」